旅行業界におけるRFPの役割

旅行業界におけるRFPの役割

提案依頼とは

提案依頼とは、何かを外部に頼む時、自分の求めるものを具体的に書いた文書のことです。英語では「Request For Proposal」といい、略して「RFP」と呼ばれています。例えば、新しい仕組みを専門の会社に作ってもらう時や、何か仕事を他の会社に任せる時などに使われます。

旅行の仕事では、主に会社の旅行を取り扱う代理店とホテルの間で、1年間の宿泊料金の契約を結ぶ際に、この提案依頼がよく使われます。会社の社員旅行や出張の手配を専門とする代理店は、多くの社員を泊める必要があるので、ホテルと年間を通して一定数の部屋をあらかじめ契約しておくことがあります。その際、代理店側は、どのような種類の部屋を、どれくらいの値段で、どれくらいの期間借りたいのか、他に何か特別なサービスが必要なのかなどを、提案依頼に詳しく書きます。

ホテル側は、代理店からの提案依頼を受け取ると、その内容をよく読んで、代理店の求めているものをきちんと理解します。そして、それに合った部屋の値段やサービス内容を考え、代理店に提案します。複数のホテルから提案を受けることで、代理店側はそれぞれの提案を比較検討し、自社にとって一番良い条件を提示してくれたホテルを選ぶことができます。

例えば、ある代理店が「都心で、駅から近く、会議室もあるホテルを、1泊1万円以内で、朝食付きで、年間100泊分契約したい」という提案依頼を出したとします。すると、条件に合う複数のホテルから、「1泊9,500円で、朝食に加えて夕食も付けられます」「1泊1万円で、会議室を無料で使えます」「1泊9,800円で、空港までの送迎バスをご用意します」といった具体的な提案が送られてくるでしょう。代理店はこれらの提案を比較し、最も条件の良いホテルを選びます。

このように、提案依頼は、ホテルと代理店が互いの希望をきちんと伝え合い、スムーズに契約を結ぶために欠かせない大切な手段と言えます。

旅行業界における活用事例

旅の計画を立てる仕事をしている会社と、宿泊場所を提供する会社の間では、一年間の部屋代を決める話し合いの際に、よく「提案依頼書」が使われます。この「提案依頼書」は、いわば、一年間の予約の注文書のようなものです。

旅の計画を立てる会社は、この「提案依頼書」に、一年間でどれくらいの部屋数が必要か、どんな種類の部屋が良いか、どんなサービスを望むかなどを詳しく書きます。例えば、「出張で使うため、一年間で百部屋、一人用の部屋が良い。朝ごはんも付けてほしいし、打ち合わせに使える部屋もあればありがたい」といった具合です。

宿泊場所を提供する会社は、この「提案依頼書」を読むことで、旅の計画を立てる会社の希望をしっかりと理解することができます。そして、その希望に合った部屋代やサービス内容を提案します。例えば、「百部屋の一年間の予約であれば、一部屋あたり一万円でいかがでしょうか。朝ごはんは無料でお付けします。打ち合わせに使える部屋も、特別料金でご利用いただけます」といった提案です。

「提案依頼書」には、部屋の種類や数だけでなく、朝ごはんや打ち合わせに使う部屋といった特別なサービスについても書くことができます。そうすることで、宿泊場所を提供する会社は、より具体的な提案をすることができます。例えば、「朝ごはんは和食か洋食か選べるようにしましょうか。打ち合わせに使う部屋には、プロジェクターやスクリーンもご用意しましょうか」といった、きめ細やかな提案です。

このように、「提案依頼書」は、旅の計画を立てる会社と宿泊場所を提供する会社の間の連絡をスムーズにし、お互いにとって良い条件で一年間の部屋代を決めるための大切な役割を果たしているのです。

実施時期と手順

宿泊施設との契約締結は、多くの場合、一年を通して行われますが、特に活発になるのは夏の終わりから秋の時期です。この時期は、翌年一年間の契約を見据えて、多くの宿泊施設が動き出すためです。まるで一斉に芽吹く草花のように、様々な催し物が開催されます。例えば、大規模な説明会や、華やかな接待会などが、数多くの旅行会社を招いて行われます。

これらの催しは、宿泊施設側にとっては自社の魅力を伝える絶好の機会であり、旅行会社にとっては様々な提案を一度に比較検討できる貴重な場となります。旅行会社は、まず自社の求める条件を詳細に記した依頼文書を作成します。この文書は、複数の宿泊施設へと送られます。受け取った宿泊施設側は、依頼内容を一つ一つ丁寧に確認し、それぞれの条件に合わせた提案書を作成し、旅行会社へと提出します。

旅行会社側は、送られてきた複数の提案書を様々な観点から比較検討します。例えば、宿泊料金、部屋の広さ、食事の内容、施設の設備、立地条件などが比較対象となります。そして、自社の顧客にとって最も魅力的で、かつ利益も見込める最適な提案を選び出します。選定後、最も条件の良い宿泊施設と個別に交渉を始めます。互いの希望条件をすり合わせ、合意点を探る根気のいる作業です。価格の調整やサービス内容の変更など、細かい点まで話し合いが重ねられます。最終的に、双方が納得できる条件に達すれば、晴れて一年間の契約が締結されます。このように、宿泊施設との契約は、一定の手続きに沿って進められる、緻密で重要な仕事と言えるでしょう。

契約交渉のポイント

商談を有利に進めるには、価格のみにとらわれず、様々な観点から綿密な検討が必要です。まずは、提供されるサービスの内容を細かく確認しましょう。例えば、宿泊施設であれば、部屋の広さや種類、食事の内容、館内設備の利用状況などを詳しく調べることが大切です。無料の無線通信網が使えるか、空港への送迎はあるかといった追加のサービスも重要な要素となります。

次に、契約の条件をしっかり確認しましょう。予約の取り消しに関する規定や支払い方法、違約金など、契約に関わる細かな条項を見落とさないようにすることが大切です。契約期間中に変更が生じた場合の手続きや、問題が発生した場合の対応についても、事前に話し合っておくことで、後々の面倒を避けることができます。

価格交渉は、ただ安くしてもらうことだけが目的ではありません。自社の希望に合った条件で契約を結ぶことが、最終的には大きな利益につながります。そのためにも、契約内容を総合的に判断し、自社にとって本当に有利な契約となるよう交渉することが重要です。

事前の準備を怠らず、交渉相手との良好な関係を築きながら、冷静に粘り強く交渉を進めることで、満足のいく結果を得られる可能性が高まります。契約書にサインする前に、最終確認を忘れずに行い、疑問点があれば解消してから契約を締結しましょう。

今後の展望

近年、誰でも手軽に宿泊施設の予約ができるようになりました。インターネットを通じて、自分の好きな時に好きな場所の宿を予約できるからです。これはとても便利な半面、仕事で宿泊施設を利用する企業にとっては、少し困った事態も引き起こしています。必要な時に部屋が確保できなかったり、宿泊料金が変動して予算管理が難しくなったりする可能性があるからです。

そこで、企業は今でも旅行会社を通して、年間契約で一定数の部屋をあらかじめ確保しています。これは、必要な時に確実に部屋を確保できるだけでなく、料金もあらかじめ決めておくことができるので、予算管理もしやすいという利点があります。このような契約を結ぶための大切な手順が、提案依頼書、つまり提案を求めるための書類の作成です。企業の希望する条件をまとめたこの書類に基づいて、旅行会社は最適な提案を行います。

この提案依頼書の作成や、それに対する旅行会社からの提案、そして最終的な契約といった一連の流れは、今後は更に便利になると予想されます。書類のやり取りや確認作業を、インターネット上で簡単に行える仕組みが整いつつあるからです。これにより、時間と手間を大幅に削減できるだけでなく、より正確な情報に基づいた契約を結ぶことが可能になります。

さらに、膨大な量の情報を分析する技術も進歩しています。これにより、いつ、どの地域で、どの程度の部屋が必要になるのかを、より正確に予測できるようになります。旅行会社はこれらの情報を活用することで、企業にとってより最適な提案を行い、企業はより効率的に出張や研修などの計画を立てることができるようになります。このように、今後も旅行業界において、提案依頼書は無くてはならない重要な役割を担っていくと考えられます。